8月の米雇用者数、予想上回る31万5000人増-労働参加率が上昇
米国の雇用者数は8月に堅調な伸びを示し、市場予想を上回った。労働参加率の改善により失業率は上昇。米金融当局にとっては強弱入り交じる内容となった。
雇用者数の増加ペースは7月に比べて鈍化したものの、なお底堅く、インフレ高進と金利上昇、経済見通しの不確実性の中でも健全な労働需要があることが示された。労働力への需要の強さは引き続き消費支出の支えとなる。
ただ、8月は労働参加率が上昇。これが賃金の前月比の伸びを一段と鈍化させる可能性がある。インフレ圧力が和らぎつつある兆しでもあり、金融当局にとって朗報になりそうだ。トレーダーの間では統計発表後、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で3回続けて0.75ポイントの利上げが決まるとの織り込みが若干後退した。市場の関心は今後、FOMC前に発表される消費者物価指数(CPI)に移ることになる。
米連邦準備制度理事会(FRB)元理事で現在はシカゴ大学ブース経営大学院の経済学教授であるランドール・クロズナー氏は、「これこそ米金融当局が求めているものだ」と指摘。「より多くの人が労働市場に戻りつつある。これは市場の引き締まりを和らげる一助になる」とブルームバーグテレビジョンで話した。
ブルームバーグ・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「より多くの人が労働力に加わった8月統計は、ソフトランディング(景気の軟着陸)を目指す金融当局にとって、いくつかの好材料を含む」と指摘。この基調が持続する限り、雇用の力強い伸びが続いたとしても賃金上昇率は鈍化していく可能性があるとの見方を示した。
ウォン氏らは一方で、労働人口の高齢化と新型コロナウイルス後遺症の影響はともに、労働参加率がパンデミック(世界的大流行)前の水準に戻るペースが緩やかにとどまることを示唆するとも分析した。
(Source: Bloomberg)